2008 Fiscal Year Annual Research Report
自発的ネットワークにおける信頼と社会規範の形成についてのゲーム理論的研究
Project/Area Number |
19530158
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
グレーヴァ 香子 Keio University, 経済学部, 教授 (10219040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 正寛 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40114988)
鈴木 伸枝 駒澤大学, 経済学部, 講師 (90365536)
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Keywords | 進化ゲーム / 囚人のジレンマ / 情報 / 信念 / 限定合理性 |
Research Abstract |
伝統的なゲーム理論ではプレイヤーの戦略的参入・退出は考察できなかったが、近年、自発的にゲームを繰り返すかどうかを選ぶというオプションを入れたモデルが分析されるようになった。この先行研究を踏まえ、簡単に利害関係が解消でき、しかも限定合理的な個人から成る社会の信頼関係や社会規範の形成と維持のメカニズムを明らかにすることが本研究の目的であった。今年度は19年度に着手した「社会的プレイヤーによる自発的継続ゲームモデル」の完成とその分析を行った。特に相手がどんな戦略を持っているのかを考えた上で行動するプレイヤーのモデルを二つ作った。 一つは、Reference Letterモデルであり、協力関係を築いたのにパートナーを外生的な理由で失った場合、「推薦状」という形で協力関係があった証拠が残るということを考えた。具体的な過去の行動まではわからないが、協力関係が存在したか否かという情報が社会で伝達されることによって、情報の伝達がないケースよりも社会的厚生が高まることを証明した。この研究はいくつかの学会で報告し、近々学術雑誌に投稿する予定である。 もう一つのモデルは、相手の今後の戦略に対する「信念」(belief)が社会的に形成、継承されていくというモデルである。展開形ゲームの戦略をもつプレイヤーの集団を考え、そこから社会的に継承される信念が導かれる。その下で、新たな戦略が侵入できないという安定性を定義し、自発的継続囚人のジレンマにおいては、これまでに発見した均衡以外の均衡の存在を証明した。 これらの研究は、いずれも既存の進化ゲームの枠組みを拡張し、進化ゲーム理論そのものに対する貢献と言える。また、グローバル社会は、自発的継続ゲームがよくあてはまる状況であり、協力関係を早期に実現し、社会的厚生を高めるための政策的提言も得られた。
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