2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530159
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
廣川 みどり Hosei University, 経済学部, 教授 (20228828)
|
Keywords | アンチコモンズ / 交渉 / 規制 |
Research Abstract |
ひとつの財について複数の主体が使用の制限の権利を有するとき、その権利が各主体の十分な使用を妨げ、使用・消費水準は過小になりがちである。これを「アンチコモンズの悲劇」いう。たとえば、一製品に数多くの特許がかけられ、それらの特許を有する主体が異なるとき、主体間の調整が十分には働かず、その製品の高価格・過小生産という事態を招くことになる。本研究では、こうしたアンチコモンズの問題を理論的に検討する。 本年度は研究3年目にあたる。初年度は、先行論文を見つつ、小さな理論モデルを構築した。そこでは、アンチコモンズの問題が主体間の調整がうまく働かないことが要因であることと捉え、代替的に、そこへの政府の規制を考える。ただ、単に規制をかけるというのではなく、政府と各主体との交渉と考える。これにより、(i)主体間の調整のコストと(ii)各主体と政府間との調整コストを比較し、政府の介入によりアンチコモンズ状態にある財の十分な活用が可能かどうかを考察しようとした。ここから出発し、モデルを拡張していこうと考えたが、成果が結実するというよりは、多くの研究者との議論を経て、アンチコモンズ自体の問題の定式化、政府の持つ情報の問題、政府と各主体間の交渉の形態や調整の扱い等、さまざまな問題があらわになった。また、産業組織論への応用の可能性なども考えられるために、多くの関心に振り回され、さまざまな方向を探るという作業に終始することになってしまった。とはいえ、有効なヒントを多く得られたと考えており、最終年度は精力的に研究に取り組みたいと考えている。
|