2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530159
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
廣川 みどり 法政大学, 経済学部, 教授 (20228828)
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Keywords | 経済理論 / 経済政策 |
Research Abstract |
ひとつの財について、複数の主体が仕様の制限の権利を有するとき、その権利が各主体の十分な使用を妨げ、使用・消費水準が過小になりがちである。これを「アンチコモンズの悲劇」という。たとえば、一製品の生産に関わる技術に関し、数多くの(代替できない)特許がかけられ、しかもその特許を有する主体が異なるとき、その製品の高価格、過小生産という事態を招くことになる。本研究では、このアンチコモンズの問題を理論的に検討する。 本研究は平成22年度で4年目を迎えた。最初は、先行論文を見つつ、小さなモデルを構築した。そこでは、アンチコモンズの問題が主体間の調整がうまく働かないことが要因であるものととらえ、代替的に、そこへの政府の規制を考える。ただ、単に規制をかけるというのではなく、政府と各主体との交渉と考える。これにより(i)主体間の調整のコストと(ii)各主体と政府間との調整コストの比較を試みた。その後、他の研究者との議論のなかで多くの問題が噴出し、結局、22年度もさまざまな方向性を探るという作業に終始してしまった。 今年度、当初作っていたモデルに対し、位置づけを行った。上のコストの比較において、(ii)は政府の介入であるが、(i)は当事者間のガバナンスの問題と考えられる。後者は、コモンズの問題でオストロームの考えた解決法とパラレルなものであろう。関わる人数が異なるなかで、(i),(ii)どちらがより効率的に機能するのか検討し、論文の方向性を決定づけた。
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