2008 Fiscal Year Annual Research Report
公共財供給メカニズムの性能と均衡戦略の学習可能性:理論的・実験的研究
Project/Area Number |
19530164
|
Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
曽山 典子 Tenri University, 人間学部, 准教授 (50309522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 徹 名古屋市立大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60134160)
|
Keywords | 実験経済学 / 公共的意志決定 / ピボタル・メカニズム / 探索行動 / Nash均衡戦略 / supermodularity |
Research Abstract |
固定規模の公共プロジェクトの実施の可否決定問題に適用されるピボタル・メカニズム(離散型PVM)と連続的に変化しうる公共プロジェクトの規模決定問題に適用されるピボタル・メカニズム(連続型PVM)の性能を比較するための実験を行い,次のことを明らかにした。 離散型PVMは真実表明は支配戦略であるが,一意的な最良反応ではなく,他の意思決定主体の戦略が一定であっても,支配戦略を選択した場合と他の戦略を選択した場合とで利得が同一となるフラットな利得構造部分が存在するのに対し,連続型PVMでは,公共プロジェクトの規模に関する個人の評価関数を厳密な凹関数に限定する限り,フラットな部分のない利得構造が実現できることを明らかにした。戦略の選択と自己の利得との対応関係から支配戦略を適合的に学習しようとする個人にとって,この利得構造の相違が,離散型PVMでは支配戦略を学習することは困難であるが,連続型PVMでは容易にさせていると考え,これを検証するために戦略選択の繰り返しを行う実験を行った。実験結果より,連続型PVMにおける支配戦略への収束の頻度や速度は,離散型PVMに比べて非常に高いということがわかった。さらに支配戦略の適合的学習過程を,Myopicな学習過程(前回の利得が前々回の利得以上であれば前回の戦略を変更せず,低ければ変更するという判断にもとづく行動)とHeuristicな学習過程(過去の最大利得を得た回数が多く,最小の利得を得た回数が少ない戦略を選択する行動)に特定化し,2つの学習過程を想定したコンピュータ・シミュレーションを実験と同様の意思決定環境の下で行い,実験結果と整合的な結果を得た。これらの結果は,離散型PVMに対して連続型PVMが支配戦略(真実表明)の適合的学習を促す上で優れた性能を発揮することを示していると結論づけた。本研究の連続型PVMの実験は,Milgrom and Robertsの示した定理(利得関数がsupermodularityを充たすゲームにおいては,プレーヤが適合的学習プロセスに従って戦略を修正して行くならば,そのゲームのNash均衡への安定的な収束が保証される)を特定のケースにおいて検証したと言える。
|
Research Products
(1 results)