2009 Fiscal Year Annual Research Report
LSEの公共政策論:20世紀イギリスにおける行政学的経済思想の系譜
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19530170
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
江里口 拓 Aichi Prefectural University, 教育福祉学部, 准教授 (60284478)
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Keywords | ウェッブ夫妻 / ナショナル・ミニマム / LSE / 公共政策 / 制度派経済学 |
Research Abstract |
LSEの学派的特徴を,F.A.ハイエク,L.ロビンズの市場経済論でもなく,H.ラスキの社会主義論でもない,「公共政策論」の系譜に着目して究明することが研究目的である。 2010年度は,質的な意味で研究計画に理論的な深化が見られた。具体的には,LSEの行政学的経済思想は,ウィリアムソンらの新制度派経済学の源流であることが次第に明らかになってきた。このことと,ホールとソスキス(2001)らの社会保護概念との関連性についても知見が深まった。このことと関連して当初予定を修正し,LSEの社会保障政策とスウェーデン福祉国家のレーン・メイドナー・モデルの社会保障行政理論との比較,つまり戦略的福祉国家論の共通性についての研究を行うことができるなど,新たな知見の展開を得た。 LSEと新制度派経済学との強い関連性についての知見の深まりだけでなく,いわゆる成果の発表という意味でも,以下の2点にわたって,当初の計画以上に達成している。(1)第6回経済学史学会研究奨励賞を受賞することができた。(2)レフェリー付きの国際雑誌(オーストラリア経済学史学会)に研究成果を発表することができた。 ただし,ロブソン,ベヴァリッジを始めとしたLSEの行政学・社会保障講座の後継者の行政学的経済思想のウェッブ夫妻との比較と解明については,アーカイブ調査を遂行できなかったことにもより,一部,不十分な点が残されていた。
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