2007 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度データによる金融証券市場の分散共分散構造の分析
Project/Area Number |
19530186
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 高樹 Keio University, 大学院・経営管理研究科, 准教授 (80420826)
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Keywords | 高頻度データ / 金融工学 / リスク管理 / 漸近分布論 / 中心極限定理 / マルチンゲール / 停止時刻 |
Research Abstract |
本研究は、市場リスク計測における最も基本的かつ重要な計測量である、分散共分散行列の推定を、高頻度価格データを用いて行うことに関する研究である。具体的には、研究代表者が共著者である東京大学吉田朋広教授と提案している方法論(HY推定重)を発展させ、金融機関のリスク管理現場への適用可能性を広げる事を目的とする。 07年度は、理論的枠組の一般化やHY推定量の統計的性質の研究を行った。特に、HY推定量の(真の共分散からの誤差の)漸近正規性が、一般の連続セミマルチンゲールでかつ観測時刻が停止時刻であるケースについて、正則条件の下で成立することを示した。価格過程が連続セミマルチンゲールで、取引時刻が停止時刻の仮定は、一般的かつ自然な仮定であり、ファイナンスへの応用上から極めて自然な設定である。一方、漸近正規性は、極限分布の分散が確定的であることを仮定としており、応用上の制約であった。年度の後半において、この制約をはずし、極限分布の分散がランダムなケースを考え、極限分散を所与とした時に極限分布が正規分布となるような、漸近混合正規性について研究を開始した。さらに、漸近(混合)正規性が成立するような、現実的かつ、計算可能なモデルの例を、ポアソン過程に従って観測時間が到着するようなスキームを中心に検討した。 得られた研究成果を、国内で3回、海外で1回発表した(英語での発表2回)。また、高頻度データ分析の分野を紹介する内容を、統計学会春季講演会にて講演した。さらに、統計学会75周年記念出版にて、研究成果を平易に解説した概説論文を出版予定である。一方で、高頻度データに関する文献の収集、既存研究のレビューを開始した。これら既存研究の成果を紹介し、また同分野の重要性を広く一般の読者に知ってもらうことを目的として、目下、京都大学大学院情報学研究科佐藤彰洋氏と共同にて本を執筆中である。
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