2008 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度データによる金融証券市場の分散共分散構造の分析
Project/Area Number |
19530186
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 高樹 Keio University, 大学院・経営管理研究科, 准教授 (80420826)
|
Keywords | 高頻度データ / 金融工学 / リスク管理 |
Research Abstract |
本研究は、市場リスク計測における最も基本的かつ重要な計測量である、分散共分散行列の推定を、高頻度価格データを用いて行うこと、具体的には、研究代表者が共著者である東京大学吉田朋広教授と提案している方法論(HY推定量)を発展させ、金融機関のリスク管理現場への適用可能性を広げる事を目的とする。 08年度は、前年度までの研究成果で明らかになったHY推定量(の真の共分散からの誤差)が一般の連続セミマルチンゲールでかつ観測時刻が停止時刻であるケースにおいて正則条件の下で漸近正規分布となるという事実の一般化を図った。具体的には、極限分布の分散がランダムとなる一般のケースにおいて、緩い正則条件の下で極限分布が漸近混合正規分布となることを証明した。これにより、本研究の理論的成果の適用範囲が大きく広がった。 一方、市場リスクの評価という観点から、代替的方法の検討に着手した。 今年度得られた研究成果はそれまでの分と合わせて国内の学会で3回発表した(内1回は共著者が講演)。この他に大学や研究所でのセミナーも行った。また、上記の今年度あらたに着手した新規研究について、その途中経過を国際会議で発表した(共著者が講演)。統計学会75周年記念出版として研究成果を平易に解説した概説論文が『21世紀の統計科学I』第10章として刊行された。高頻度データの戦略的な活用は、金融リスク管理の高度化の観点から重要であり、当分野の啓蒙・普及を目指して過去年度からの継続案件として、概説本の執筆作業を行っている(共著)。
|