2009 Fiscal Year Annual Research Report
高頻度データによる金融証券市場の分散共分散構造の分析
Project/Area Number |
19530186
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 高樹 Keio University, 大学院・経営管理研究科, 教授 (80420826)
|
Keywords | 高頻度データ / 金融工学 / リスク管理 |
Research Abstract |
本研究は、高頻度データを用いることによって金融証券間の分散共分散行列の推定方法を更に発展させることを目指し、具体的には、研究代表者が東京大学吉田朋広教授と共同で提案している「HY推定量」の理論を発展させ、実務への適用可能性を広げることを目的とした。 最終年度(09年度)は、HY推定量の漸近理論の一般的枠組みで完了させその成果発表を行った。具体的には、価格過程が一般の連続セミマルチングールで、かつ観測時刻が停止時刻であるケースの下で、HY推定量が正則条件の下で漸近混合正規分布を持つことを厳密に示し、国内外の学会で口頭発表した。研究論文は目下査読中である。観測時刻が価格履歴に依存する状況は扱いが難で、一次元のケース(ボラティリティ推定)でさえ既存研究は僅少であり、今次研究成果が分野の理論応用両面の発展に貢献できたと考える。なお、マイクロストラクチャ・ノイズ有や価格ジャンプ有のケース等、より現実的な状況への対応は今後の課題として残った。 一方、当分野の啓蒙・普及を目指して、高頻度データ分析に関する既存研究レビューを行った。雑誌に論文を掲載した他、目下書籍原稿の執筆中である。今次成果を踏まえたHY推定量に関する解説記事も準備中である。 更に、昨年度に引き続き、市場リスクの計測・評価の高度化のための代替的手法を研究調査した。一つ目はパリ大学Jacod教授、東大吉田教授との共同で、観測時刻が価格過程に依存する状況における実現べき乗変動(realized power variation)の統計的性質(漸近理論)を調べるもの、二つ目は、京都大学佐藤彰洋氏との共同で、高次元の資産や証券間の取引量の変動の共分散構造を記述するための、市場参加者のニュースに対する反応を表現する二項混合分布型モデルの提案および高頻度データ分析である。両研究とも、雑誌投稿中である。
|