2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530200
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玄田 有史 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
|
Keywords | 世代効果 / 労働市場 / 若年雇用 / ニート / 貧困 / キャリア教育 / 格差 |
Research Abstract |
研究計画において「20年度以降は、若年無業問題の社会的位置づけについて、より具体的かつ総合的に明らかにし、さらにそれを踏まえて若年無業に関する国際比較研究に向けた研究を整備していく」ことを述べたが、以下の通り実現した。 日本の若年無業には、卒業時点での労働市場の需給状況が大きく影響していることを、主に米国との比較から解明した。高校卒および中学卒では卒業前年の失業率が高かった世代ほど、卒業後も非正規雇用および無業であり続ける確率が持続的に高くなる「世代効果」が存在した。日本の低学歴に顕著な世代効果の存在は、日本に固有な学校の就職斡旋制度と正社員採用後の解雇費用の高さがもたらしていることを理論的に解明した。これらの制度は多くの若年の安定雇用に寄与した一方、卒業直後に正社員となれなかった若者を永続的に無業化させ、安定雇用への移行を困難にする。これらの事実を解明し、海外の専門雑誌に投稿採択されたことは、日本の労働市場や経済システムに関する世界的理解を広める上で、重要な意義を持つ。 研究計画では「適宜、共同論文ならびに単著の研究論文として学術雑誌に投稿し、査読を経た上での掲載を20年度以降には積極的に目指す」としたが、実際『人間には格はない』と題する書物を刊行した。同書は『無業』『格差』をキーワードに労働市場を分析し、研究目的であった「1990年代から2000年代にかけて日本で若年無業者が急増した背景を実証的に踏まえた上で、無業から就業への移行を促進するプロセスについて明らかにすること」を意図した。そこではニートが貧困世帯から発生しやすいこと、非正規雇用の短期転職を繰り返すことが安定的な就業への移行を困難化するという実証結果を踏まえ、定着を促すことを目標とした職業教育の必要性を指摘した。その点は研究計画で示した「学校段階でのキャリア教育のあり方に関する具体的な提言」となっている。
|