2007 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな対外不均衡の中長期的動向と、新たな国際通貨システムの成立可能性
Project/Area Number |
19530207
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松林 洋一 Kobe University, 経済学研究科, 教授 (90239062)
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Keywords | 対外不均衡 / 貯蓄・投資バランス / 消費行動 |
Research Abstract |
本年度は、グローバル・インバランスにおいて中核をなす、米国の貯蓄・投資バランスを、我が国との比較において分析することにした。特に米国の消費・貯蓄行動の特徴を精査しておくことは、米国の肥大化する経常収支赤字の動向を予測する上で、極めて重要な課題であると考える。 より具体的には、以下の手順で分析を進めた。 1 まず、米国の消費行動の特徴を、資産効果の有効性と限界という観点に基づき、精緻に検証した。検証結果より、住宅資産から派生する各種現金化分は、必ずしも消費支出に直結しているわけではなく、金融資産、住宅資産の更なる蓄積に当てられている可能性が高いことを指摘している。このようなメカニズムが、実際に生じているとすれば「住宅価格の下落に伴い、大幅な逆資産効果が発生する危険性がある」という通説は、再検討を要することになる。 2 次に米国に部門別貯蓄の代替性を、理論的メカニズムを明確にし、定量的に考察した。 民間部門の過剰な消費体質は、個人貯蓄を急速に低下させている。ただし、もし企業部門、政府部門の貯蓄が、これを代替するとすれば、マクロ経済全体における大胆な貯蓄低下は免れる可能性がある。今回の分析結果からは、家計貯蓄と企業貯蓄には、若干程度ではあるが、代替性が確認できた。ただし政府貯蓄と民間貯蓄(家計貯蓄+企業貯蓄)との間には代替関係は見られなかった。つまり財政赤字と民間貯蓄がともに低下する可能性は十分にあり得ることが確認できたことになる。 3 経常収支を、貯蓄・投資バランスのアプローチから理論的に解釈するという分析は、必ずしも十分に理解されているとは言い難い。とりわけ動学的枠組みに依拠する理論分析は、未だ包括的に展望、検討されているとは言い難い状況にある。本年度はこの点についても、大学院レベルのテキスト執筆によって、この点を体系に整理した。
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Research Products
(3 results)