2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな対外不均衡の中長期的動向と、新たな国際通貨システムの成立可能性
Project/Area Number |
19530207
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松林 洋一 Kobe University, 経済学研究科, 教授 (90239062)
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Keywords | グローバルインバランス / 貯蓄・投資バランス / 国際通貨システム / ブレトン=ウッズ体制 |
Research Abstract |
本研究では、「グローバルな対外不均衡の中長期的動向と、新たな国際通貨システムの成立可能性」という研究テーマを設定し、同テーマを、経済理論、計量経済学の最近の潮流を踏まえ、多角的に考究していくことにした。まず第1に対外不均衡の理論的メカニズムを正確に理解することを主眼として、経常収支の決定と変動の理論構造を整理した。 この整理は大学院レベルの上級テキストの一部として結実させることができた。第2に、対外不均衡の変動を貯蓄・投資バランスの観点から捉え、貯蓄サイドのダイナミズムを検証した。具体的には、家計貯蓄・企業貯蓄・政府貯蓄という部門別貯蓄の代替性について、理論、計量の両側面から検討した。まず、代替メカニズムを、経済主体の異時点間にわたる最適化行動に立脚しつつ、理論的に明確にした。続いて定量的な分析を試みた結果、家計貯蓄、企業貯蓄については、両国ともに、1970年代以降、若干の代替性が観察された。この分析は、査読制雑誌(「経済分析」)に投稿、受理された。第3に投資サイドからの検証を行った。具体的には、為替レートの変動が、国内資本ストックにどのように影響するのかという点について考察した。この点は、開放経済にあるわが国においては、極めて重要な研究課題であるが、先行研究はほとんど存在していない。このような状況を鑑み、本分析ではまず既存の投資理論を拡張、修正させることによって、開放体系下における資本ストック調整のメカニズムを明らかにし、時系列分析を援用して現実妥当性を検証した。我が国の場合、為替レートの影響は、産業、期間ごとに様々である点が確認された。なお同分析は日本経済学会において報告した。第4に、これらの分析から得られた知見をベースとして、「グローバルインバランス」という現象の概念整理を行うとともに、同現象の中長期的な予測も試みた。この包括的展望は、「経済学研究年報」に結実させた。
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Research Products
(4 results)