2007 Fiscal Year Annual Research Report
アジア地域におけるFTAが加盟国の産業構造と所得格差に与える影響の理論的分析
Project/Area Number |
19530210
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藪内 繁己 Nagoya City University, 経済学研究科, 教授 (40264741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多和田 眞 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10137028)
近藤 健児 中京大学, 経済学部, 教授 (70267897)
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Keywords | 貿易の自由化 / FTA / EPA / 国際的要素移動 / 失業 / 賃金格差 / 環境汚染 / 最低賃金 / 非合法移民 |
Research Abstract |
藪内は、アジア地域の経済統合を念頭に、先進国と途上国のFTAないしEPAに伴う貿易の自由化や要素移動の自由化による経済効果についての研究を行った。とりわけ、失業が存在する途上国に注目し、貿易や要素移動の自由化が産業構造、失業率、厚生水準および賃金格差に及ぼす影響について分析を行った。主要な結果は、貿易の自由化は一定の条件の下で、賃金格差を縮小し失業率を低下させ、また賃金格差や失業に対しては要素移動の自由化よりも貿易の自由化が望ましいといったことなどである。 多和田は、2国1財1要素のラマスワミモデルを使用して国際的な非合法移民の分析をおこなったボンド=チェンの論文を基に発展させて、最低賃金制をとっているハリス=トダロ的な途上国からの非合法的移民が移民受入国の経済に与える影響について、理論的な分析をおこなった。特に受け入れ国の非合法移民への取り締まり政策の強化や送り出し国の最低賃金水準の引き上げが両国の経済厚生や国民所得、さらには要素価格や非合法移民量にどのような影響を及ぼすかについて分析をおこなった。興味ある結果として、最低賃金水準の引き上げは途上国の雇用の賃金水準に対する弾力性の大小によってその効果は逆になることが明らかとなった。 近藤は、FTA/EPAの相手国として、貿易量が多く越境汚染の問題も抱える隣国と、そうでない遠方の国と、どちらを選択するべきかという問題に関し、3国に拡張したコープランド・テイラー・モデルを用いることで理論分析を行った。結論として、日本政府のこれまでの実績とは異なり、むしろ隣国とのFTA/EPA締結の方が好ましいケースが現実的であることを示した。またEPAに含まれる締結国からの労働力受け入れに関し、最適な規制政策を考察する研究をオスロ大学のヨーロッパ労働経済学会で報告した。
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