2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジア地域におけるFTAが加盟国の産業構造と所得格差に与える影響の理論的分析
Project/Area Number |
19530210
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
薮内 繁己 Nagoya City University, 大学院・経済学研究科, 教授 (40264741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多和田 眞 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10137028)
近藤 健児 中京大学, 経済学部, 教授 (70267897)
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Keywords | 貿易の自由化 / FTA / EPA / 国際的要素移動 / 失業 / 賃金格差 / 環境汚染 |
Research Abstract |
藪内は、昨年に引き続きアジア地域の経済統合を念頭に、先進国と途上国のFTAないしEPAに伴う貿易の自由化や要素移動の自由化による経済効果についての研究を行った。とりわけ、途上国において、関税に換わるあるいはそれを補完する自由化政策として外国資本の流入が、熟練労働と非熟練労働の賃金格差にどのような影響を及ぼすかに注目して分析を行った。成果の一部は、ヨーロッパ地域学会(ERSA,リバプール)において報告された。 多稲田は、アジアの途上国の産業構造にかんする理論的分析を、途上国の経済発展にとって重要な課題となっている環境問題に関連付けて行ってきた。使用したモデルは、途上国の理論モデル分析においてよく使用されるハリス=トダロ・モデルで、このモデルにおいて都市工業部門における生産が環境汚染を引き起こし、農村農業部門の生産性に悪影響を及ぼすという想定のもとで、汚染削減技術の改善によって各部門の生産や雇用あるいは都市失業がどのようになるかを分析した。その結果、汚染削減技術の進歩により、工業部門の要素雇用量は増加し、農業部門のそれらは減少すること、もし工業部門が資本集約的なら、都市失業は増加することなどが結果として引き出された。 近藤の研究は先進国とFTA/EPAを締結する候補となる発展途上国が、越境汚染発生源の国とそうではない国と2国あり、どちらかの国とだけ締結した場合に、貿易利益、環境汚染、経済厚生にどのような影響が生じるかを分析したものである。ここでは現実に日本がFTA/EPAを締結している南米諸国やインドネシアなど越境汚染とは無関係な国とではなく、中国、韓国のように越境汚染発生源の国と締結する方が明らかに望ましくなる条件が2つ導かれた。
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