2009 Fiscal Year Annual Research Report
アジア地域におけるFTAが加盟国の産業構造と所得格差に与える影響の理論的分析
Project/Area Number |
19530210
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
藪内 繁己 Aichi University, 経済学部, 教授 (40264741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多和田 眞 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10137028)
近藤 健児 中京大学, 経済学部, 教授 (70267897)
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Keywords | 貿易の自由化 / FTA / EPA / 国際的要素移動 / 失業 / 賃金格差 / 環境汚染 / 最低賃金 / 密貿易 |
Research Abstract |
藪内は、本研究の最終年度として、FTAないしEPAなどによる資本の流入が域内の比較的発展の遅れた国の教育部門の社会的基盤に与える効果に注目し、資本移動が熟練労働と非熟練労働の賃金格差にどのような影響を及ぼすかについて分析を行った。その結果、資本移動の自由化は熟練労働の育成に資するものの、賃金格差に与える効果は、要素の集約性や社会的・制度的な諸要因に依存することが確認された。研究成果の一部は、Review of Urban and Regional Development Studies(2009)に掲載された。 多和田は、同じく途上国を念頭に、失業が存在する経済における労働移動と環境汚染の問題について、いわゆるハリス=トダロ(HT)モデルを拡張して分析を行った。通常のHTモデルとは異なり効用の差による労働移動を考えている点に特徴があり、汚染除去技術の改善が都市の失業を増加させる一方で、労働者の厚生水準には影響を及ぼさないという結果を導いている。研究成果は、Pacific Regional Science Association学会(GoldCoast, Australia, 2009年7月)などで報告され、Review of Development Economicsに掲載予定となっている。 近藤は簡単な部分均衡分析のフレームワークを用いて、コピー商品の密貿易が横行する経済における罰金政策やFTA/EPA締結の経済効果を分析した。いずれも一定の条件の下では、罰金政策の強化は国内経済の社会的余剰にとって好ましくない傾向となるのに対して、FTA/EPA締結に伴う関税の外生的な引き下げは、逆に国内経済の社会的余剰にプラス要因となる傾向が強いことが理論的に示された。研究成果は日本港湾学会中部部会(2009年8月)での報告経て、港湾研究第31号に掲載されることになっている。
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