2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530215
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ Keio University, 経済学部, 教授 (60203874)
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Keywords | バイオプロスペクティング / 生物多様性条約 / 利益配分の衡平性 / 伝統的知識 / 非金銭的利益 / ワシントン条約 / 違法取引 / 生物多様性オフセット |
Research Abstract |
平成21年度は、昨年度に引き続き、生物多様性条約における、遺伝資源の利用から発生する利益配分をめぐる問題を、バイオプロスペクティングをもとに分析を行った。今年度は、従来の金銭的利益(収集したサンプルへの支払)に加えて、非金銭的利益(技術移転、雇用、知識の集積)も扱い、これらの利益が(1)途上国のアクターが企業のような利潤行動的をとるか、あるいは研究所・大学のように非営利行動をとるか(2)伝統的知識があるかないか、でどのように変わるのかを分析した。途上国は伝統的知識をもとに非営利的行動をとることが多いが、これが金銭的利益では不利に、また非金銭的利益では雇用を除いてやはり不利に働くことが示された。一方、日本の生物多様性問題として、豊岡市におけるコウノトリ保全の取り組みを、コウノトリ育む農法に着目して農家の農業収益の観点から分析した。無農薬農法、減農薬農法および慣行農法を比較して、減農薬農法が収益の面で優れていることを示した。これは、減農薬農法の採用の伸びを裏付けている。また、コウノトリ保全の経済効果は産業連関分析より少なく見積もって年間約10億円となることを示しか。一方で、熊の胆(ユータン)の取引をもとに、わが国での違法取引の可能性と取引市場の確立による影響を分析した。ユータン取引の現状の調査をもとに理論的モデルを構築し、いくつかの条件の下では、取引市場を確立することは、他国からの密輸を減らす効果かおることを示した。さらに、サンゴ礁修復の手段として注目されている移植について、その問題点を明らかにし、バスケット型供給を提案した。さらに生物多様性オフセットの仕組みと働きについて経済学的に評価した。
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Research Products
(5 results)