2007 Fiscal Year Annual Research Report
キャリアや評判に対する経済主体の関心が最適な企業組織に及ぼす影響についての研究
Project/Area Number |
19530216
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
玉田 康成 Keio University, 経済学部, 准教授 (30265938)
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Keywords | 最適な組織構造 / 継続投資 / アドバースセレション / モラルハザード |
Research Abstract |
一度スタートしたプロジェクトはその収益性に疑問が生じてもストップしないで継続してしまう傾向が強いことは現実経済でもよく観察される.その理由としては,ストップさせることによって担当者の評判が傷ついてしまうこと,成功したときの報酬を受け取りたいことなどを上げることができる. この研究ではプリンシパルがエージェントにプロジェクトを依頼し,そのプロジェクトは2期間にわたるエージェントの投資が必要であるような状況を考える.例えば,最初の投資はデザイン,次の投資は作成のような状況を考えればよいだろう.1期目の投資の結果その収益性に疑問が生じたならば2期目にプロジェクトを継続するべきではないが,上記の理由でプロジェクトは継続されてしまう傾向があるときに,プリンシパルはエージェントから1期目の結果についての情報を引き出しプロジェクトの継続についての判断を適切なものにしたいと考える.ここで問題は,1期目と2期目で同じエージェントを採用するか(統合型組織),それとも異なるエージェントを採用するか(分離型組織)のそちらのシステムがより効率的にプロジェクトの継続・ストップを実行できるかというものである. 主要な結論は以下のとおりである.(1)統合型組織のほうがエージェントの投資インセンティブを引き出しやすい.(2)分離型組織のほうがプロジェクトの収益性についての情報を獲得する上では優れている.(3)1期目の投資がそれほど重要ではないならば,投資のインセンティブよりもプロジェクトの継続・ストップの効率性を重視して分離型組織を採用すべき. ここで得られた結論は,企業内におけるエージェントの長期的な評判や報酬に対するインセンティブがプロジェクトの継続・ストップという重要な意思決定に対してゆがみをもたらすこと,そして,企業の組織構造の選択を通じてこの問題を部分的にはコントロールできることを示している.現実の企業組織のあり方についても重要な論点を提示していると考えられる.
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Research Products
(2 results)