高齢者向けサービスの提供における供給組織と政策に関する経済分析

2007 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 19530238
• Research Institution: Kobe University
• Principal Investigator: 鈴木 純 Kobe University, 経済学研究科, 准教授 (40283858)
• Keywords: 高齢消費者 / NPO / 情報の不完全性 / 信頼 / 関係的サービス / 関係的資産

Research Abstract

高齢者向けサービスの提供における供給組織と政策に関する経済分析を課題として、研究計画初年度の本年は、高齢者対象市場における種々の環境条件の変化を議論することが可能な分析用具を形成することを目的とした。この目的のため、関係する理論分析とともに、高齢消費者に関わる諸問題や、組織形態に関する法制度(NPO法など)と組織活動との関係、日本の公的介護保険制度に代表される関連諸制度などについて広くサーベイを行った。
本研究が主な分析対象としているサービスの特質としては、取引される財・サービス自体の特殊性、消費者が高齢であることによる特殊性、供給者需要者双方にとって取引形態の歴史(経験)が浅いこと(および行政による提供という歴史)などが挙げられる。研究の結果、これらの特質を要因として、取引されるサービスの価値がその取引内部で生成されるという点が、供給組織形態の多様性と重要な関係を持っているとの結論に達した。そのような取引が成立するために必要な、ある種の信頼関係を醸成するという点において、非営利であることや、地域共同体との結びつきなどが、一定の機能を果たしていることが予想される。だが現時点では、特定の組織形態が有するそれらの機能を導出しうる、操作可能なモデルを構築するには至っていない。
引き続き、社会関係資本に関する理論分析や、関係的資産に関する理論について、本研究への応用可能性を探る努力を進めたい。