2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530245
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
脇田 成 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (60242046)
|
Keywords | バブル / 失われた10年 / 自己資本比率 / 内部留保 / 非正規雇用 |
Research Abstract |
本研究ではバブル崩壊と失われた10年を、不良債権処理といった側面から考察している。今年度は、大きく分けて2つのことを行った。第1にさて日本経済の景気循環における調整プロセスの変容である。 サイクルの進行プロセスから考えるともともと労働力の調整が遅い日本企業は、 ・好況初期には保蔵された労働力を使って生産が早く立ち上がる一方、 ・賃金など費用の上昇は企業利潤が確定してから、おもむろにゆっくりと進む という言う特性を持つ。企業利潤を売上(=生産)マイナス費用と分類すると、売上の調整は早いが、費用の調整は遅く利潤をみてからおもむろに進む。輸出が伸びて売上が伸びるのが好況の第一段階とすれば、費用である賃金が伸びる第二段階は設備投資や消費がもたらす内需中心となる。 第2に企業の内部留保増大により、企業の財務面には注目すべき変化がある。内部留保増大は自己資本比率上昇をもたらした。特に98年以降に急上昇しており、これは株式市場ではPBRの低下をもたらしていることである。この自己資本比率の上昇は、規模別に見て大企業のみならず1000万以上の企業に見られる広範囲な現象であり、その理由は金融危機に関連して自己防衛にせまられた企業は自己資本を積みますからである。ただしこの行動は、個別企業の最適化にはつながるが、マクロ経済全体では「合成の誤謬」をすすめてしまう。またこの自己資本積み増しは上記景気循環の第二段階に対応するため、当該時期の日本の景気循環は一進一退を繰り返したのである。
|
Research Products
(4 results)