2008 Fiscal Year Annual Research Report
総額管理による医療費抑制下における医療供給サービスに関する研究
Project/Area Number |
19530258
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
稲垣 秀夫 Yokkaichi University, 経済学部, 教授 (70159937)
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Keywords | 医療費抑制 / 予算総枠 / 点数単価調整 / クールノー・ナッシュ / 競争促進 / 過小診療 / 過剰診療 / 実験経済学 |
Research Abstract |
平成19度研究では、医療資源の効率的利用や医療費の抑制を図るために、各医療機関が出来高払に従う診療報酬規定(診療報酬点数表)に従って請求した後、当該疾病の診療報酬点数の単価が一定診療報酬総額を各医療機関からの請求点数の合計である総請求点数で割って事後的に決定する「点数単価調整方式」を新たに提示した。この方式と特定な一疾病に対する診療報酬の予算総枠制を医療費抑制策として組み合わせる診療報酬支払制度下における医療機関間の競争促進が特定な一疾病の請求点数(治療量)に与える効果を理論分析した。この分析から得られた理論仮説は、医療機関間の競争促進は当該疾病の診療報酬点数の単価を単位治療コストまで低下させ、当該疾病の社会全体の総治療量を増加させるというものである。 平成20年度には、理論モデルを精査し、当該モデルから得られる理論命題の妥当性を実験経済学的手法によって検証した。検証結果は以下のようにまとめることができる。 本研究で提示している出来高に基づく点数単価調整方式による診療報酬支払と予算総枠制は、医療機関のクールノー・ナッシュ競争を想定する限り、競争促進は診療報酬点数(請求点数)の単価を単位医療コストまで低下させ、社会全体の総治療量を高め、実験経済学的手法による理論仮説の検証がその実行可能性の高いことを示した。 今後、患者による医療機関の自由選択と医療機関の患者選別が存在する状況下で、医療費の総額管理下における高齢者医療と非高齢者医療の「質の確保」と「医療サービス供給の効率化」、「医療費総額増加の抑制」が可能な医療制度の基本的枠組みの制度設計を行い、その制度の実効性を経済実験によって検証する。
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