Research Abstract |
本年度は,前年度にその作成方法を検討した,確率内生的保有収入率及び保有費用率の不確実性を示す部分(ζ)のデータの作成を行った.また,Homma(2009(2008の改訂版),pp.28-31)で提示されたリターン及びリペイメントの理論的検討を行った.特に,貸出の保有収入率のζについては次の点が明らかになった.第1に,(1)短期貸出の保有収入率のζは実際の保有収入率の約-15%相当する.また,(2)長期貸出の保有収入率のζは実際の保有収入率の約12%に相当する.いずれも無視できない大きさである.第2に,その内訳を絶対値で見ると,(1)については,短期貸出金利のζが一番大きく(-63.5%),次いで債務不履行損失率(-32.5%),未収利子率(15.7%),サービス料金率(0.235%)と続く.(2)については,債務不履行損失率のζが一番大きく(-10.7%),次いで長期貸出金利(1.88%),未収利子率(-0.42%),サービス料金率(0.12%)と続く.短期貸出と長期貸出では,ζの構造が大く異なることがわかる.第3に,実際の短長の貸出金利の変動に占めるζの割合は約2.4~6.6%にすぎないのに対し,それらの未利子率の変動に占めるζの割合は約89~100%にも達する.未収利子率のほとんどはζであるといっよい.また,Homma(2009(2008の改訂版),pp.28-31)で提示されたリターンについては次の点が明らかになった.すなわち,このリターンは従来の貸出利や有価証券の利率を特殊ケースとして含むより一般的概念であり,真の収益性を表すものである.もし,限界可変費用,自己資と準短期利潤との限界代替率,保有収入率の金融資産弾力性がゼロで,かつ,保有収入率に不確実性がなく,それが貸出金利や有証券の利率のみで表されるならば,このリターンは貸出金利や有価証券の利率と一致する.
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