2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 亘 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (20293681)
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Keywords | 経済理論 / 金融論 / 指値注文市場 / 注文戦略 |
Research Abstract |
本研究では、指値注文市場において投資家がどのように注文を出し、その結果どのように取引が行われるかを、指値注文市場ゲームのマルコフ完全均衡を求めることにより分析した。指値注文市場の分析では、板の状態が複雑になることが障害となるが、本研究では指値注文が一定期間経過後に自動的にキャンセルされると仮定することで板の状態を簡単化した点に方法上の特徴がある。本年度は、投資家の選好の異質性の影響および、呼値の刻み(指値注文の値段の刻み幅)・時間優先の原則という取引ルールの影響に焦点をあてた。選好の異質性の影響について、辛抱強さ(割引因子)が投資家により異なる場合、均衡では相対的に忍耐強い投資家が指値注文を出し、そうでない投資家が成行注文を出すことがわかった。よって、投資家により辛抱強さが異なると仮定すると、実質的に投資家の注文選択を固定化してしまい、状況により適切な注文を選択できるという指値注文市場の特徴を分析しにくくなることが明らかとなった。取引ルールの影響については、まず、呼値の刻みが粗いと最良気配を更新する費用が高くなるため、投資家は最良気配に指値注文を出し価格競争が制限される一方、時間優先の原則により、最良気配を更新した場合の執行確率上の限界便益が増加するため、最良気配を更新する注文が出やすくなることが確かめられた。そのため、同じ証券が様々な取引所または証券会社の私設取引所等で売買され市場が分断化した場合、市場間での時間優先の原則の適用は困難であるため、ビッド・アスク・スプレッッドが広くなり、取引費用が増大する可能性があることがわかった。逆にいうと、時間優先の原則を適用し、さらに呼値の刻みを細かくすることで、指値注文間の価格競争を促進することができることが確かめられた。
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