2008 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期の日本における有価証券・商品市場の効率性と期待形成
Project/Area Number |
19530274
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鎮目 雅人 Kobe University, 経済経営研究所, 教授 (80432558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮尾 龍蔵 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (40229802)
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Keywords | 昭和恐慌 / 高橋財政 / 物価変動予想 / 長期金利 / 商品先物価格 / 金融政策 / 金本位制 / 国債の日本銀行引き受け |
Research Abstract |
本研究では、大恐慌の深化と収束のメカニズム、とりわけ金融政策とデフレとの関係について、民間経済主体の物価変動に関する期待形成のあり方の観点から実証的な考察を行うこととした。具体的な研究方法としては、両大戦間期日本の有価証券市場ならびに商品先物市場の機能を踏まえつつ、市場参加者の期待形成の分析に利用可能なデータを発掘し、市場参加者の期待形成について検討することとし、その際、金本位制からの離脱、国債の日銀引き受けといった政策運営の枠組みの変遷が、市場参加者の期待形成に大きな影響を与えていたか否かを検証することとした。 まず、前年度に引続き、両大戦間期における、(1)東京株式取引所に上場されていた国債の価格を用いた期間別金利、ならびに(2)米・生糸・綿花・綿糸・砂糖の商品先物価格のデータを整備した。次に、これらのデータを用いて市場参加者の期待形成について分析した結果、金本位制からの離脱は市場参加者の円安予想を惹起し、デフレからインフレへと期待形成を大きく転換させた一方、国債の日銀引き受けの開始は市場参加者のインフレ期待を高める有意な効果を与えていなかったことが確認された。この背景には、当時の日本経済が開放小国としての性格を強く有していたことがあると考えられる。 上記の研究成果は、ディスカッション・ペーパー(2本)にまとめ、学会発表を行うとともに、ワークショップを開催して、研究者ならびに政策関係者に広く還元した。1930年代以来とされる世界的な経済危機が発生している現状において、本研究成果は、今後の政策運営を考えるうえで参考となる歴史的教訓を含んでいると考えられる。
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