2007 Fiscal Year Annual Research Report
物価連動債およびファイナンス理論の数理的諸問題の研究
Project/Area Number |
19530279
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 敬一 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (00381442)
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Keywords | 金融論 / ファイナンス |
Research Abstract |
ファイナンス理論はその研究領域と手法の多様性から隣接分野が多いものの,その数学的手法が高度になるにつれて各分野の知見が十分に融合していない研究課題が散見される.本研究は,物価指数に関連する問題で,資産価格に関するファイナンス理論で十分に解明されていない,いくつかの数理的問題点を解明することを目的としている.平成19年度では以下の2点が研究成果である. Ikeda and Tanaka(2008)"Preference Rate Induced by Risk Aversion"においては,確定的な消費に対しても心理等の理由により内的なゆらぎのために効用水準が不確実性になる,という設定のもとで内生的な時間割引率を導出した.効用水準を不確実にする要素として,心理的要素以外にも物価指数として解釈することも可能である.すなわち,効用を消費量ではなくその貨幣価値を基準とする,貨幣への幻想(money illusion)を持った投資家の行動は,物価指数を内的なゆらぎと見る投資家の行動と同じである.内生的な時間割引率の導出をしたが,さらに議論を発展させて,インフレ連動債を導入した場合の結果,および,内的なゆらぎを確率測度の変換の観点から整理することが期待できる. Tanaka(2007)"Asset allocation under inflation of two goods"は編集過程途上にあるが,消費財と耐久財の複数の財から構成されるバスケットにした場合のポートフォリオ選択問題の考察をしている.ファイナンス分野における既存研究では,物価指標の構成は従来単一的であり,複数財のバスケットから構成される物価指数のモデル化は成されていない.2財の価格変動の間の相関に起因する,投資家の株式投資比率の問題のみならず,耐久財が持つ資産としての側面を探求できる.
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