2009 Fiscal Year Annual Research Report
物価連動債およびファイナンス理論の数理的諸問題の研究
Project/Area Number |
19530279
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 敬一 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 教授 (00381442)
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Keywords | 金融論 / ファイナンス |
Research Abstract |
本研究は,資産価格に関するファイナンス理論で十分に解明されていない,いくつかの数理的問題点を解明することを目的としている.元来ファイナンス理論はその研究領域と手法の多様性から隣接分野が多いものの,その数学的手法が高度になるにつれて各分野の知見が十分に融合していない研究課題が散見される. 金融機関を中心に,金利リスクヘッジに多用されるスワップションやCMS(Constant Maturity Swap)のポートフォリオの価格計算には,モデル整合性を維持しつつ,ある程度の精度を持って高速で計算できることが望ましい.論文"Applications of Gram-Charlier expansion and bond moments for pricing of interest rates and credit risk"は,そのための近似計算を提示した。満期日における価格の密度関数について,標準正規密度関数によるその商をエルミート多項式で直交展開したものがGram-Charlier展開なので,容易に計算可能である.その際の展開の係数を債券モーメントを用いてより平易に計算できるようにしたことは,信用リスクを含めて類似の派生商品の価格付けにも容易に応用できることが本論文の貢献である. 異なる種類の金利や通貨の間のスプレッド,すなわち,イールドスプレッドは信用リスクや流動性リスクを表す重要な指標である.例えば,ドル金利と円金利を交換するベーシススワップは,本国通貨とは異なる通貨建ての債券を発行した企業が本国通貨に転換するために利用されるスワップであるため,通貨間の需給の度合いを示す指標であり,信用問題が生じた場合には通貨の信用を示す指標ともなる.そのような,スプレッド取引のオプションの需要が増加するなか,そのオプションの実務的な価格付けの要請に対して,論文"Yield Spread Options under the DLG model"はDLGモデルを用いてその合理的な価格付けの方法を提案した.その具体的な計算方法として前述のGram-Charlier展開と債券モーメントを活用することも可能である.
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