2007 Fiscal Year Annual Research Report
株式税制が家計の株式保有に与える影響の研究〜個票データによる分析
Project/Area Number |
19530282
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
林田 実 The University of Kitakyushu, 経済学部, 教授 (20198873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
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Keywords | 財政学 / 株式税制 / 経済統計学 / 経済政策 / 金融論 |
Research Abstract |
課税が株式投資行動に及ぼす影響に関する実証研究は、わが国でいまだ十分な蓄積がない。そこで本研究はその間隙を埋めるべく、社団法人証券広報センター実施の『証券貯蓄に関する全国調査・平成12年度版』の個票データを用いて、配当課税が家計の資産選択行動に与える影響を探った。具体的には、本調査が各家計の株式保有残高のみならず、購入予定額、予定保有期間について尋ねていることから、株式需要と保有期間に対する各家計の限界税率の影響を検証した。平成12年当時、配当所得課税の制度は1銘柄あたりの配当額に応じて、源泉徴収、申告納税、およびその選択と複雑になっていることから、家計ごとに異なった限界税率を推計することが可能である。株式需要額と予定保有期間を、そうして算出した限界税率で、貯蓄総額、年収、年齢などとともに、Tobitモデルとsample selectionモデルを使って回帰した。その結果、配当税率の上昇は株式需要を押し下げ、保有期間を引き延ばすということが強く示唆された。ただし、株式投資・保有を行うかいなかの質的選択に関する配当課税の影響は、明確に結論づけることはできなかった。 ところで日経平均は2007年6月に18、297円の高値をつけた後、米国のサブプライム問題の直撃を受け2008年3月末、13、000円を割り込む水準に至っている。その意味では、本研究の第1の結論「配当税率の上昇は株式需要を押し下げる」の政策的含意は極めて明白である。このような不確実な環境の中で配当税率の引き上げを行った場合、「貯蓄から投資へ」の国是は頓挫するほどの株式需要の減退が起こるかもしれない。むしろ、配当への税負担を引き下げる政策こそが必要である。他方、配当税率の上昇が株式保有期間を延長させる効果については、平成12年当時の歴史的な低金利を勘案すると、明確な政策含意を導くことは現時点では容易ではない。
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Research Products
(1 results)