Research Abstract |
本年度は,劣後債のプレミアムに対して,銀行のファンダメンタルな財務指標がどのように影響を与えているかどうかについての実証分析を行なった.研究実施計画では,コビッツ・ハンコック・クワスト(Covitz,Hancock,and Kwast(2002))が定式化した,劣後債の発行する意思決定を考慮した実証分析を行なう予定であった.コビッツ・ハンコック・クワストは,銀行が劣後債を発行する決定に関して,プロビットモデルを用いた回帰分析を行っている.推計式は,ISSUE_<it>f(FC_<it>,BC_<it>,OF_<it>,SP_<it>であり,ここで,ISSUE_<it>は銀行iがt期またはt-1期に劣後債を発行した場合に1,そうでないときには0と置く変数,FC_<it>は銀行iのリスクの代理変数,BC_<it>は一般的な経済状態の代理変数,OF_<it>は銀行iの期待税率,SP_<it>は自己資本比率を改善させる方向への銀行iに対する監督当局の圧力の代理変数である.しかし我が国においては,米国と異なり劣後債の市場が薄く利用できるデータ数に限りがあったことから,劣後財のプレミアムを財務指標で説明する単純な回帰分析を行なった.具体的には,劣後債のプレミアムをR_<it>として,推計式は,R_<it>=f(FG_<it>,BC_<it>,OF_<it>,SP_<it>)とした.その結果,我が国においても,劣後債のプレミアムが銀行のファンダメンタルな要因に影響を受けていることが分かった.
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