2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530286
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
小藤 康夫 Senshu University, 商学部, 教授 (60142832)
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Keywords | 貸し渋り / 貸し剥がし / 新金融機能強化法 / 地域企業金融機関 / 金融庁 / 世界的経済危機 / システムダイナミックモデル / 公的資金注入 |
Research Abstract |
世界的な経済危機の影響を受け、わが国の金融機関は中小企業向け融資に対して慎重な姿勢を取り続けたため、新規資金の融資をためらうばかりか、既存の貸出を回収する金融機関も現れるようになった。貸し渋り・貸し剥がし現象の発生である。 金融庁と金融機関ではそれぞれの目標が異なっているので、正反対の行動を取る傾向がある。そうした両者の矛盾を回避する有効な手段として金融機関への公的資金注入が考えられ、2008年12月にそれを実現させるための法律として新金融機能強化法が復活した。これにより金融機関は公的資金の予防的な資本注入が再び可能となった。 だが、実際のところ、金融庁が予想したほど多くの金融機関がこの制度を利用しようとはしなかった。これでは貸し渋りや貸し剥がしが騒がれるなかでもっと多くの金融機関が積極的にこの制度を利用しない限り、意味のある対策にはならない。そのためにはさらに多くの金融機関の利用が期待されたのである。 平成21年度の研究では新金融機能強化法が金融庁の期待したほど多くの金融機関が名乗りを挙げなかった理由を貸出から発生する損益の状態に求め、そのことを簡単なモデルとシミュレーションを用いて丁寧に説明している。 この問題は昨年提出した申請書のなかも中心となるテーマであることを指摘している。それは中小企業金融の世界で普遍的な問題とも思われる。したがって、この問題を分析し、明らかにしない限り、貸し渋り・貸し剥がし問題は解決できないことになるので重要なテーマであると考えている。
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