2008 Fiscal Year Annual Research Report
株主資本コストアプローチによる無形資産価値評価とリスク構造の解明
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19530291
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
乾 孝治 Meiji University, 大学院・グローバル・ビジネス研究科, 准教授 (60359825)
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Keywords | 金融論 / 金融工学 |
Research Abstract |
わが国の株式市場に上場している企業に関して株価および財務データに関する研究用データベースを構築し,実証研究を実行するための各種分析プログラムを開発した.例えば,株式収益率の実証分析ではベンチマーク的存在であるFama and French(1992,1993)モデルを基本として,各種ファクターを追加した拡張モデルに関して,クロスセクションおよび時系列回帰等の分析や,分位ポートフォリオによるシミュレーションを実行しそのパフォーマンスを評価するプログラムなどを作成した. これらのツールを使い,新しい残余利益モデルにより個別企業の株主資本コストを推計し,リスクプレミアム分解を施し,研究開発費とリスクプレミアムの関係に関して実証分析を行った.その結果,従来の研究では有意な関係を見いだせなかった業種別の分析においても,研究開発と株主資本コストを低下させる効果(=無形資産価値創造効果)との関係性を示すことができた.また,リスクプレミアムへの分解結果を時系列的に見ることで,90年代最後のITバブルや最近の金融危機の状況で,投資家が要求しているリスクプレミアム構造のダイナミックな動きを観測することができた. また,Lelandモデルによる実証分析では,業種別のビジネスリスクをインプライドに決定する方法を新たに提案し,その結果として,業種横断的なビジネスリスクの大きさを相対的に比較し,さらにリスクを考慮したデフォルトリスク調整後の理論株価の推計方法を示した. これらの研究成果を利用することによって,過去の収益率データから推定するタイプのリスクモデルでは捉えきれないリスク構造をタイムリーに把握すると同時に,モデルからの乖離を新たな情報として再利用することで,将来株価の予想にも利用できる可能性を示すことができた.
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