2008 Fiscal Year Annual Research Report
信託制度の形成・発展と金融システムにおけるその機能
Project/Area Number |
19530297
|
Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
西山 茂 Kyushu International University, 経済学部, 教授 (20289565)
|
Keywords | 金融論 / 信託 / 信託制度 / 金融制度 / 金融仲介機能 / 金融システム / 新制度経済学 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
本研究課題は信託制度の形成・発展とその機能について金融制度論の視角から理論的に考察することを主眼とする。とりわけ本年度は、信託の金融仲介機能に対する信託制度の効果、最適化過程としての信託制度の発展、理論的フレームワークの深化とモデルの整備・拡充、の3点に重点的に取り組んでいる。成果の概要は以下の通りである。 第一に、信託制度が信託の金融仲介機能に対して有する効果について、実際の信託制度と信託法に即して具体的な考察を進め、信託の固有な金融仲介機能に対する制度的な保障という観点からこれを定式化するとともに、金融仲介機能に対する作用を基準とする信託制度の効率性の評価を行うことができた。加えて、こうした考察を通じてとりわけ受動信託の概念とその意義が明らかにされ、信託制度の効果に関する理論的な検討をさらに深める端緒が得られた。 第二に、時間を通した信託制度の発展についての理論的な考察に取り組み、信託の制度的発展の要因となる新たなモラルハザード(と信託制度によるその抑止)として、受託単位の設定による利益相反の発生とそれに基づく金融仲介機能の規律低下を析出し、さらに信託制度の発展に対するその作用の一端を明らかにした。この要因は利益相反問題に関する従来の検討においてもほぼ完全に看過されているので、今後も継続的に考察を進め、この要因を組み込んだモデル分析をさらに進めたいと考えている。 第三に、理論的フレームワークの深化とモデルの整備・拡充である。本研究課題においてはシュタッケルベルク・ゲームの理論と概念を信託の金融仲介機能に適用して基本的なモデルを構築している。本年度は間接金融と直接金融への同時的関与という信託の独自な金融仲介機能とその意義をさらに明確化するため、それぞれの金融方式の優位性を規定する条件をこのモデルに即して把握するとともに、モデル構築に必要な前提の再検討を行っている。
|
Research Products
(4 results)