2009 Fiscal Year Annual Research Report
信託制度の形成・発展と金融システムにおけるその機能
Project/Area Number |
19530297
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
西山 茂 Kyushu International University, 経済学部, 教授 (20289565)
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Keywords | 金融論 / 信託 / 信託制度 / 金融制度 / 金融仲介機能 / 金融システム / 新制度経済学 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
本研究課題は金融制度としての信託制度に関する理論的な検討を主眼とする。本年度は当初の計画に基づき、(1)信託の金融仲介機能とその制度的展開との相互作用、(2)最適化過程としての信託制度の発展、(3)金融システムにおける信託制度の機能、(4)研究の進展に対応した理論的フレームワークの深化、の四つの課題に重点的に取り組んだ。 主要な成果の概要を示せば、(1)では金融仲介機能に対する信託制度の効果について、この制度が有する本質的な諸規定とその金融的意義を踏まえた考察を進め、とりわけ信託制度における「信託財産の統一性」が、信託財産の形態における金融資産の蓄積、金融資産としての信託財産の自立化、信託証書の間接証券化という作用を通じて、信託の金融仲介機能を制度的に可能にすることを示した。さらに経済的所有権の概念に基づいて信託制度の理論的分析を行い、受託者と受益者の間での所有権の二重化という信託に独自な所有権の構造を捉えるとともに、ここに所有プレミアムの理論を適用して信託報酬の本質と源泉を明らかにしている。 (2)については、金融仲介機能に対する効果をより効率化する信託制度の構築を「信託制度の最適化」と捉え、この観点から信託制度の発展の理論的分析とモデル化を進めた。本年度はこの研究課題で基本的な変数の一つとなっている信託の固有な経済的便益とその意義について立ち入って検討した。 (3)では、信託の固有な金融仲介機能に対して信託制度が有する効果の解明を基礎として、信託制度が金融システムに包摂されることにより金融構造にどのような作用が生じるかについての考察に着手している。 以上の成果を総合しつつ、(4)としてモデルの深化を進めることができた。とりわけ信託の固有な経済的便益は、信託の金融仲介機能・信託の制度化・信託制度の諸規定の三者を関連づけ、総合化する機能を有することが本年度の研究によって把握できている。最適なモデル構築の重要な端緒と考えられるので、今後もさらに追究していく計画である。
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Research Products
(5 results)