2010 Fiscal Year Annual Research Report
信託制度の形成・発展と金融システムにおけるその機能
Project/Area Number |
19530297
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
西山 茂 九州国際大学, 経済学部, 教授 (20289565)
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Keywords | 金融論 / 信託 / 信託制度 / 金融制度 / 金融仲介機能 / 金融システム / 新制度経済学 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
本年度はこの研究課題の最終年度であったので、研究の総括と将来的な展開を念頭に置きつつ、(1)信託の金融仲介機能とその制度的展開との関連、(2)金融制度としての信託制度の発展、(3)金融制度論を適用した信託法の分析、の三つの課題に重点的に取り組んだ。 項目別に成果を概説すれば、まず(1)では信託制度が有する本質的な諸規定とその金融的意義を捉えつつ金融仲介機能に対する信託制度の効果について考察を進めた。とりわけ受託者の基本的義務である信託事務遂行義務に即して、受託者の義務が信託機関の固有な金融仲介機能を制度化し、金融制度としての信託制度の作用の一端を実現するとともに、信託機関による事実上の直接金融への関与の制度的な保障、信託機関の金融仲介機能の実質化・補完化、貯蓄超過主体の貯蓄行動および意思決定と信託機関の金融仲介機能との整合化をもたらすことを理論的に解明した。 (2)については「信託制度の最適化」(信託機関の金融仲介機能に対する効果をより効率化する信託制度の構築)の観点から信託制度の発展の理論的分析とモデリングに継続的に取り組んだ。ここでは昨年度の研究によって明らかにされた信託の固有な経済的便益とその意義について立ち入って検討するとともに、モデルにおけるそれらの定式化を進め、これまでの成果を集約したモデリングの端緒を得ることができた。 最後に(3)では、研究の総括と今後のさらなる研究の展開をも視野に入れ、本研究課題の主眼であった金融制度としての信託制度が有する機能についての理論的な検討をさらに深めつつ、金融の領域における法と経済学に関する学際的研究の観点から信託法の金融経済的基礎とその金融制度的意義に関する考察に着手した。具体的な成果として、信託法の金融的な考察にとっても前提となる信託の経済的概念の定式化に向けて理論上および方法上の論点を整理し、併せて信託の金融的定義を捉えることができている。
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Research Products
(5 results)