2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530299
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白木沢 旭児 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 教授 (10206287)
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Keywords | 長期建設 / 日中戦争 / 戦時体制 |
Research Abstract |
日中戦争期における満洲国、中国・華北占領地における経済開発に関する資料を収集し、東京大学東洋文化研究所、東京大学社会科学研究所、国立国会図書館、国立公文書館、国立公文書館つくば分館、防衛省防衛研究所図書館、アジア経済研究所、一橋大学、大阪市立大学、京都大学農学部図書室、大阪府立図書館などから貴重な文献を複写または筆写した。満洲国の工業に関しては、9月に学会発表を行い、戦時統制経済の新解釈に関しては10月に学会発表を行った。また、中国占領地における鉱業、工業、農業開発に関して、まとまった量の資料が集まっているので、論文執筆の準備をしている。 満洲国の工業に関しては、『満洲国工場名簿』を用いて、中国人工場主による工場の設立が従来の評価以上に大きいこと、満洲国建国以後の変化が大きいこと、在来産業、軽工業が中心であったために、満洲国内の各地域経済において有機的な分業関係の進展が見られること、を指摘した。 戦時統制経済の新解釈に関しては、1930年代前半、すなわち昭和恐慌の打開策が主要な課題であった時期の統制経済論と、1930年代後半以降、すなわち戦時体制強化、生産力拡充が至上命令であった時期の統制経済論を比較・検討し、前者と後者は論理を異にすること、30年代前半の統制経済の実態の矛盾があって、30年代後半以降の統制経済論が成り立っていること、戦後、「統制経済」として強く人々の記憶に残ったのは、30年代後半の戦時統制経済であること、30年代前半の統制経済は、その実態のある部分は戦後に受け継がれていると見てよいことを主張した。
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