2008 Fiscal Year Annual Research Report
土着と外来 -中世前期北西スラヴ、バルト地域にみる社会経済的融合過程-
Project/Area Number |
19530311
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
市原 宏一 Oita University, 経済学部, 教授 (20223109)
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Keywords | 経済史 / 中世史 / 北西スラヴ / 東方植民 / ドイツ:ポーランド:リトアニア:ラトビア:エストニア |
Research Abstract |
本年度は,計画に挙げた1,考古学成果を援用した社会経済的分析,として,前年度までのポーランド沿岸ポモジェ地方における考古学成果と近年見直しの進んでいるバルト海沿岸の考古学成果についての比較検討を行った。前年度に行ったポーランド・トルソ(エルバング)の最新の発掘成果の整理によって、ヴァイキング期大量の交易遺物と共に,スラヴにはない鉄釘を用いた北欧系の舟遺構などが見いだされていることは重要であり、さらには当地の研究者によって,同時期のデンマーク・ハイタブ類似の馬蹄形塁壁が見通されている。さらに,近年ポーランド学界等で進展している従来の考古学成果の見直しとして、ヴォリンなどバルト海南岸の交易地遺跡の位置づけについて整理を行った。とりわけバルト北岸では土器以外には目立った交易遺物がなく、その土器も出土地域が限定されていることを根拠に初期ヴァイキング期におけるバルト南岸での交易センター存在の見直しが提言されている。ただし、それにはとどまらずに、遠距離交易の中継点が地域的な交易それ自体ではなく、ローカルな地域的権力や社会的結集に影響したとの見方が提示されていることが注目される。 計画に挙げた2,文献史料と考古学成果との総合的検討,としては,バルト海沿岸に係わる聖人伝などの記述史料のなかでも、先に挙げたポシメルン交易地遺跡との関連の深い地域に係わる11世紀後半のアダム『ハンブルク大司教座事績』および、当該地域に布教活動を行った聖オットーに係わる記述史料との総合的検討をおこなった。今後さらに文献史料と考古学資料の総合が課題となっている。
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