2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530312
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山崎 志郎 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 教授 (10202376)
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Keywords | 戦時経済 / 統制経済 / 流通機構 / 物流機構 / 物資動員計画 / 計画造船 / 海運統制 / 需給調整 |
Research Abstract |
本年度の研究は流通・物流機構の整備問題を扱う前提として、まず戦時統制経済の根幹部分、すなわち物資動員計画の解明に力を注いだ。300程度の主要物資について国内供給の見通し、国内需要の査定と割当を行い、需給の安定を図り、不足部分は消費節約と配給統制によって適正処理するという計画が、必然的に国内経済の全面統制をもたらすプロセスを詳細に解明した。さらにこの素材部門の需給計画を基に、厖大な消費財産業の需給統制が展開することを解明し、例えば、生ゴムの民需制限が作業用の地下足袋の部門別配給計画の基礎となり、民需用の棉花割当が国民衣料生産と配給制の根幹がとなっていることなどが具体的に解明された。 物流面では、戦時海運統制と計画造船の実施過程を分析した。日中戦争勃発以来、船舶の軍徴傭が始まる一方、輸送需要は拡大したため重点物資の郵船輸送を図るための海運統制が始まった。さらに船舶建造量を拡大するため、物資動員計画による重点資材配当や標準船の量産体制の模索がなされ、大西洋戦争期に大量喪失が始まると徹底した増産措置が展開することになった。従来、計画的造船の成果はさほど大きくないと見られていたが、一次資料に基づいて大量生産体制が展開したことを明らかにした。 最後に戦後統制が一応解除された1950年代、60年代においても、素材産業を中心に需給調整が図られ、1970年代まで手法を変えながら市場安定化対策が実施されていたことを、化学繊維工業や石油化学産業を素材に解明した。
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