2008 Fiscal Year Annual Research Report
東ドイツにおける素材型及び加工組立型工業の産業史・企業史的分析
Project/Area Number |
19530315
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Research Institution | Akita University of Economics and Law |
Principal Investigator |
白川 欽哉 Akita University of Economics and Law, 経済学部, 教授 (20250409)
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Keywords | 戦後ドイツ経済 / ドイツ産業史 / 戦後賠償問題 / カール・ツァイス・イエナ / IGファルベン / 強制移住 / ザクセン・アンハルト州 / テューリンゲン州 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に続き、戦後の東ドイツ工業の出発条件を規定した素材型部門と加工組立型部門の復興について、対ソ賠償との関連で分析した。具体的には、ザクセン・アンハルト州の化学素材メーカー(旧IGファルベンのロイナ、ブナエ場、アグファ写真工場)、航空機メーカー(ユンカース、ヘンシエル、ジーベル)、光学機器メーカー(カール・ツァイス・イエナ)について、前年度から収集してきた文献(古書、新刊本)を用いて検討した。 分析から得られた知見は、初期の懲罰的な対ソ賠償(デモンタージュ=工場解体)が、占領地域(=東ドイツ)の復興の条件を著しく阻害していたことである。それは、当初解体を免れていた航空機、化学、光学・精密機器の企業(上記の企業)にも及ぶようになり、東ドイツの復興にブレーキがかかった。その後、東西冷戦下で東ドイツが社会主義化する過程でソ連政府は賠償政策を段階的に転換し、東ドイツは1950年代前半にようやく復興のスタート地点に立つことができた。 従来の研究が戦後賠償の規模に焦点をあてたのに対して、本研究では、分析対象を産業部門レベルや企業レベルにおいたことで賠償の内容に踏み込むことができた。そして、復興期の東ドイツ工業の供給上の隘路の実態がより鮮明となった。 思いがけない成果としては、ドイツの非軍事化に関するソ連の徹底ぶりを確認できたことである。占領地域の「社会主義化」よりも、その点に賠償政策の重心があったといっても過言ではなかろう。 今後の課題は、個別企業を事例に国有化と計画経済の実像とその裏表を分析することである。
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Research Products
(3 results)