2007 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の地方都市における士族と産業の担い手の数量的研究
Project/Area Number |
19530319
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松村 敏 Kanagawa University, 経済学部, 教授 (60173879)
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Keywords | 近代日本経済史 / 近代日本史 / 士族 / 加賀藩士 |
Research Abstract |
本研究の目的は、石川県金沢市のこれまで筆が発見・収集した都市全体を網羅するような個人経済活動のデータをコンピュータ入力しデータペースを作成して、数量的に分析することにより、旧城下町の近代都市における社会経済構造の全体像を把握しようというものである。 平成19年度においては、明治初年の士族名簿(古川脩編著『加賀藩士人別帳』上・下、1997年刊、私家版。これは金沢士族を全部網羅していないが禄高が記載され、武士としての階層が判明する)、明治20年代前半の金沢市に籍のある約1万1千人の士族名簿(金沢市『士族授産金分引継交名簿』明治24年度)、明治27・28年の市内で営業する約5千人の商業者名簿(商業税賦課名簿)、明治21年・34年の所得税納入者名簿、の大半ないしすべてを入力した。 また金沢市『士族授産金分引継交名簿』(明治24年度)のデータベースに、職業や旧禄高を、種々の資料によって可能な限り確定し、入力する作業は現在も続行中であるが、平成19年度末までの分析では、旧禄高1000石〜1万石層の明治中期以降の行方が杳として知れず、没落した者が多いと推定される。他方、明治中期以降、陸海軍士官・官吏・学者などとして活躍した者を多く輩出させた層はおおむね50石からせいぜい500石層までであり、これは加賀藩では上級武士層とは必ずしもいえない。これは先行研究とは必ずしも一致しない点であり、興味深い論点を含むと思われる。 さらに、明治27・28年の商業者名簿(商業税賦課名簿)と、金沢市『士族授産金分引継交名簿』(明治24年度)のデータベースをつきあわせる作業を行ったが、明治20年代の士族と商人の重なり具合、またいかなる旧禄高の層の士族がどのような商人になっていったかについては、士族の約1割が商業に参入し、商人の約2割が士族であり、またやはり下級武士層が主体であったという暫定的な結論を得ることができた。 『石川県統計書』『金沢市勧業統計書』『金沢市統計書』『工場通覧』の資料についてデータ入力は平成19年度は一部分の入力に止まったので、平成20年度の課題である。
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