Research Abstract |
取引先の信用評価に関しては,企業の経営管理上の重要課題の一つとしてこれまでに数多くの研究が行われ,様々な信用評価理論と手法が提案されている。これらの理論と手法は取引先の信用調査,公表財務データおよび株価などの外部データに基づくものがほとんどであり,財務・経営情報の公表が義務付けられている上場企業の評価に適しているが,財務・経営情報が非公開である企業には適用不可能である。 本研究の目的は,信用調査,公表財務データおよび株価によらず,売上,取引代金の請求,入金などの日常業務データに基づき,取引先の信用評価を行う手法とシステムを提案することである.Hl9年度では,次の3点から研究を進めて研究成果を国際学会などで発表した。 (1)事例ベース推論手法を用いて取引先の信用評価を行う際,評価対象と過去事例との類似度を如何に評価するかは非常に重要である。研究代表者は,6つの類似度を定義のうえ,実データによりシステムの性能と類似度との関係を検証し,類似度定義の決定に関していくつかの知見を与えた。 (2)サポートベクターマシンという新しい人工知能手法を適用し,問題の定式化を行ったうえ,サポートベクターマシンの適用に必要なパラメータの選定について実例問題を用いて検証した.さらに判別分析手法と比較し,サポートベクターマシンによる取引先分類手法の有効性を検証した。 (3)信用評価に利用する評価指標の選択を考究し,評価指標の選択に関して3つの案を提示した。また,これらの選択案を企業の実例データに適用することにより,各種評価指標の特徴,信用評価の正確さに対する評価指標選択の影響を調べた。 本研究の研究成果は中小企業の信用評価に実用できるため,取引先の倒産による売上代金の不払い損失を避けて,また企業の連鎖倒産を回避するのに有効な手法またはシステムを提供することができる。
|