Research Abstract |
リーマン・ショックを発端とした金融危機が発生して以来,不況がまだ続いており,上場企業も含めて企業の倒が多数発生している。取引先の倒産による売上代金の不払い損失を避けて,また企業の連鎖倒産を回避するために有効な取引先の信用評価手法とシステムを確立することが重要である。従来の信用評価理論と手法は取引先の信用調査,公表財務データおよび株価などの外部データに基づくものがほとんどであり,財務・経営情報の公表が義務付けられている上場企業の評価に適しているが,財務・経営情報が非公開である企業には適用不可能である。これに対して,本研究では,売上,取引代金の請求,入金などの日常業務データに基づき,取引先の信用評価を行う手法とシステムを提案する.平成21年度では,次の3点を重点におき研究を進めて研究成果を得られた。 (1)倒産企業の数が非倒産企業より極端に少ないため,過去の倒産企業と非倒産企業の関連データを収集するとき,倒産企業のサンプル数も非常に少なく,倒産企業と非倒産企業のデータサンプル数のアンバランスが激しい。これが原因でいままで提案された信用評価モデルでは,非倒産企業をよく評価できるのに対して,倒産企業の予知と評価には不十分なものが多いことがわかった。 (2)バギングという集団学習手法を,日常業務データに基づく中小企業の取引先信用評価問題に適用し,異常取引先社数が非常に少ない実問題について,正しく格付けを行う予知精度が最大29%で改善できた。 (3)エントロピーという概念を導入し,各評価指標のエントロピーをウエートとして加重平均値を用いて信用評価値を計算する手法を提案した。企業の実例を用いて検証した結果,一定の有効性が見られながら問題点も多数あり,今後の課題を明らかにした。
|