2007 Fiscal Year Annual Research Report
工場組織とその競争優位に関する研究-戦略的人的資源管理の観点から-
Project/Area Number |
19530329
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
咲川 孝 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80272805)
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Keywords | 戦略的人的資源管理 / 製造成果 / 製造現場の組織 |
Research Abstract |
電機製造工場の現場組織に焦点を当てたアンケート調査の結果によれは、仮説で提示したように、いわゆるHigh Performance Work Practices、つまり高い成果を生み出すと想定される仕事や組織に関する諸慣行(practices)は、品質、コスト、納期といったQCD製造成果とは、あまり強い関係がなかった。さらに、製造形態、つまり、組立ラインかセルかと、これらの慣行との交互作用を調べようとした。具体的には、「人に依存した製造形態」といわれる組立セルにおいて、製造成果とHigh Performance Work Practicesとの関連はより強いという仮説をも検証してみたが、その関連はあまり強くなかった。そこで、この調査結果の意味をよく理解するために、アンケート調査の対象企業に訪問して、調査結果をフィードバックした上で、製造現場における仕事や組織の諸慣行と製造成果との関連を再検討してみた。その結果、製造成果、とりわけ品質に関して、製造現場での「品質の作り込み」というよりも、より作り易い設計にすること、つまり「前工程での品質の作り込み」が重要であることが分かった。また、製造技術部のエンジニアたちが製造現場でのミスをできる限り少なくするように、ミスを少なくする仕組み、いわゆる「ポカヨケ」の設置が重視され、それが品質の向上と関運していた。さらに、High Performance Work Practicesあるいは組織志向のHRMというよりも、市場志向のHRM、例えば、非正社員を市場の変動に応じてライン、セルに投入することなどが、製造現場のマネジメントでは今日、重要な課題となっていた。このように、製造現場でのHRM慣行と製造成果との関運を明らかにしようとしたが、それは、HRMと成果との関連が具体的であり、直接的な関連がみられる現場レベルでのHRM-成果との関連を明らかにしたことを意味する。しかし、その関連はあまり強くなく、海外の戦略的人的資源(SHRM: Strateglc. Human Resource Management)の分野の研究者が主張する程、その関連は強くなく、そのことは「戦略的インパクトの限界(the limits of strategic impacts)」を意味する。今後は、これらの残された問題点(例えば、エンジニアの役割、管理者の役割)をも考慮に入れて、総合的な視点から、現場レベルでのHRM-成果との関連を理論的、実証的に研究していく。
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Research Products
(4 results)