2008 Fiscal Year Annual Research Report
機関投資家のコーポレート・ガバナンスに与える影響に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
19530344
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
てき 林よ Osaka City University, 大学院・経営学研究科, 教授 (40236964)
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Keywords | 機関投資家 / 所有と経営の分離 / エージェンシー問題 / モラル・ザード / コーポレート・ガバナンス / 受託者責任 |
Research Abstract |
本研究では、「機関投資家現象」という資本市場の構造的変化が個人投資家と企業を繋げる資本市場のガバナンス構造にどのような影響を与えるかについて考察し、日本のデータを使って実証分析を行った。その結果、以下の主な結論を得た。第1、年金基金や投資信託といった機関投資家は、投資先企業とビジネス関係を持つ銀行や保険会社と違って、純粋の投資対象として銘柄を選別し、情報生産の役割を果たしている。第2、機関投資家が投資している企業には経営業績の改善が見られ、この改善は、機関投資家が企業に有言または無言の圧力を掛けており、その企業のコーポレート・ガバナンスにおいて大きな役割を果たしていることを示唆している。 本研究かちは以下の政策的インプリケーションが得られる。経済が発展するにつれて、株式所有の分散化が必然的に起こり、経営者の裁量権も自然に大きくなる。所有と経営が分離する今日の経済社会においては、経営者は、企業価値よりも、市場占有率、企業規模と自分の報酬を優先的に追求しがちである。このいわゆる所有者と経営者の間のエージェンシー問題を抑制することはコーポレート・ガバナンスの目的である。有効なコーポレート・ガバナンスを構築するには、市場経済の重要なルールの-つである投資家保護関連の法制度を強化するとともに、市場経済の重要なプレヤーである機関投資家にして投資先企業の経営者を監視・牽制させることが重要である。 もちろん、機関投資家に大きな権限を委任するにはその機関投資家が受託者責任を果たす存在でなればならない。そのためには委託者(受益者)と受託者(機関投資家)の間の関係を律する法制度を整備し、それを担保するためにSEC等の政府専門機関が機関投資家の行動に目を光らせる必要がある。
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Research Products
(1 results)