2008 Fiscal Year Annual Research Report
「社会」による企業ガバナンスの論理およびその実現可能性についての研究
Project/Area Number |
19530359
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小阪 隆秀 Nihon University, 商学部, 教授 (20120446)
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Keywords | 市場の論理 / 社会の論理 / 企業ガバナンス / ステーク・ホルダー / 企業の社会的責任 / 利己主義 / 利他主義 / コミュニティ |
Research Abstract |
本研究の目的は、企業を社会の側からガバナンスする可能性とその論理を明らかにすることである。企業のガバナンスについて、これまで、株主主権論、ステーク・ホルダー論、企業の社会的責任(CSR)論、企業倫理論などによって、検討されてきた。そして、多くの知見がもたらされてきている。このような研究は、基本的に、企業を市場との関係でとらえるのか、あるいは社会との関係でその本質をとらえるのか、という2つに類型化できる。本研究では、K.ポラニーの所説によって、社会を市場の外にあるものとして、その論拠を明らかにした。 「市場の論理」のなかで、ステーク・ホルダーたちが利害の調整を要求する場合、それは各利害関係者たちが「利己主義」に基づいて行動するものと仮定されている。しかし、社会が企業に要求しているのは、利己主義ではなく、利他主義である。利他主義に基づいて社会的責任を果たすように企業をガバナンスすることが、本研究で明らかにしようとして「社会の論理」である。 このような「社会の論理」を析出するために、K.ポラニー、P.F.ドラカー、F.フクヤマなどの主著を検討してきた。彼らはいずれも、社会(コミュニティ)のなかから市場とその機能が生み出され、市場のなかの組織と社会が相互補完的対立関係を形成してきたことを明らかにしている。企業の社会的責任を論じる場合、このような市場と社会との相互補完的対立関係を基礎にすることを避けて通ることができない、というのが結論である。
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