2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530364
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
葛山 康典 Waseda University, 社会科学総合学術院, 教授 (10257222)
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Keywords | SEO / 資金調達 / リアルオプション |
Research Abstract |
本年度の研究では、投資のタイミングに関する理論的な分析の一部と、投資に際して行われる資金調達について、そのタイミングをふまえた実証分析を中心に研究を行った。主な成果は次のとおりである。 既上場会社が株式による資金調達SEO(Seasoned Equity Offering)を公表した時点で、短期的な累積収益率が-2.0%程度(負のアナウンス効果)となることが、欧米の株式市場で観察されている。理論的には負のアナウンス効果の原因を経営者と投資家の間の情報の非対称性に求めるのが一般である。ところが、本邦市場ではアナウンス効果が有意に正であることが報告されてきた。しかしながら、従来の実証研究に用いられたサンプル数は必ずしも十分であるいえないものであった。本研究では、十分に大きなサンプル数を用いた実証分析の結果、2000年以降は欧米市場と同様の有意に負のアナウンス効果が観測されるという我々の実証結果をふまえ、その原因を平成13年度に行われた制度改正にもとめた。2001年以降は、公募価格の際の価格決定方法にブックビルディングが採用されることが一般的である。このような方法が採られなかった2000年以前のSEOでは、引受証券会社に安定操作が認められていた。安定操作は価格下落を抑止する効果があるため、投資家はSEOアナウンスの際に、公募株式に対して潜在的な需要を予見できる。本研究では、この投資家の期待を一種のオプションとして評価したうえで、オプションプレミアムを控除した累積収益率が2000年以前・以降で無差別であることを統計的に示し、安定操作の存在が負のアナウンス効果を打ち消す役割を果たしていることを示した。
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