2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530364
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
葛山 康典 Waseda University, 社会科学総合学術院, 教授 (10257222)
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Keywords | SEO / オプション |
Research Abstract |
本研究では、投資意思決定とそのタイミングに関して、資金調達の観点から分析を行った。理論的には株式による資金調達に際し、経営者と投資家の間に存在する情報の非対称性は投資のタイミングに非常に大きな影響を与える同時に、SEO(Seasoned Equity Offerings)のアナウンスによる株価の低下(負のアナウンス効果)を引き起こし、これらが互いに影響しあうことが知られている。また、実証分析によれば、財務諸表の開示からの時間経過が大きいほど負のアナウンス効果が顕著となることが報告されている。 本邦市場における実証研究では、正のアナウンス効果が報告されてきた。本研究では過去25年間の1,000を超えるSEOに関する分析を行った。Fama Frenchモデル等5種類のベンチマークに対して推計された新聞掲載翌日の異常収益率が米国同様に約-2%の有意な異常収益率が観測された。累積異常収益率を用いると、2000年以降においては、その発生タイミングも含めてほぼ米国と同様な事象が観測された。 また、2000年を境とする変化の原因を平成13年商法改正等に求めた。特に、SEOについてもブックビルディング(BB)が導入され、またSEOの意思決定から払込までの期間短縮が可能になった点に着目した。BB導入以前は安定操作が通例であったが、安定操作はコールオプションと同様に株式の価格分布をゆがめる効果がある。そこで、2000年以前のSEOに関して、投資家の安定操作に対する期待から生じる影響をオプション理論を用いて推計し、これを控除した異常収益率を推計した。その結果、2000年前後で異常収益率には有意な差がみられないという結果が得られた。 本邦市場でも、従来より負のアナウンス効果は存在していたが、この効果は安定操作をはじめ、SEO手続きの制度に起因する影響によって優越されていたことを統計的に確認した。
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Research Products
(2 results)