2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19530387
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
崔 容熏 Doshisha University, 商学部, 准教授 (70315836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 啓嗣 福井県立大学, 経済学部, 准教授 (60398980)
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Keywords | マーケティング / 産業財 / ブランド / BtoB / 素材・部品 / 「顧客の顧客」戦略 / ブランド・エクイティ |
Research Abstract |
今年度は産業財(部品・素材)の買い手企業及び売り手企業から収集した定量的なデータを用いて、産業財のブランド・エクイティ形成における「顧客の顧客」戦略の有効性を実証した。この研究は産業財の中でも、買い手と使い手が異なる主体によって構成される素材や部品の分野で、直接の顧客企業だけではなく、「顧客の顧客」の認知が産業財のブランド・エクイティを形成する上で影響を及ぼすだろうという仮説を検証するのが目的であった。そのため2回の産業財関連の展示会から124社のデータを収集し分析を行った。分析の結果明らかになった点は次のように整理できる。 第1に、素材や部品のような中間財においては、直接の買い手企業だけではなく、「顧客の顧客」が当該産業財をどのように評価するのかが、ブランド・ロイヤルティ(製品ロイヤルティと企業ロイヤルティ)の形成に影響を与えることが明らかになった。つまり、買い手企業は、あるブランドの素材や部品が自社製品に含まれていることを、自分の顧客が評価すればするほど、当該ブランドと売り手企業に対するロイヤルティを形成するのである。 第2に、ただし、「顧客の顧客」による知覚が常に、またいかなる状況においても重要なわけではない。本研究では買い手企業の製品に占める部品や素材の重要度を媒介変数として、そのモデレータ効果を測定した。その結果、買い手企業にとって当該産業財の購買が重要であればあるほど、「顧客の顧客」による知覚がブランド・ロイヤルティの形成に与える影響は大きくなることがわかった。 第3に、Riel et al(2005)ですでに実証されたように、産業財メーカーのマーケティング努力は買い手企業の知覚に影響を与えることを通じて、ブランド・エクイティの形成にポジティブな影響を及ぼすことが証明された。中でも、情報提供とサービスのレベルは、製品そのものよりは、企業ブランド・エクイティを向上させることを媒介にして、ロイヤルティ意図を高めることが確認された。 産業財におけるブランド・エクイティを形成するメカニズムについては近年多様な角度からの分析が行われている。しかし、ほとんどの先行研究は消費財を中心として蓄積されてきたブランド研究に依拠し、産業財のブランド・エクイティを買い手の知覚をベースにして測定するというスタンスを採っている。この視点は産業財におけるブランド・エクイティの存在を実証レベルに落とし込む上で貴重な試みであり、貢献であったと言える。 そのほかに本研究では、産業財の売り手企業からもデータの収集を終えており、それについては現在分析を進めている。
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Research Products
(2 results)