2008 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレートガバナンスの変容と会計情報の機能に関する実証的調査
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19530398
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
乙政 正太 Kansai University, 商学部, 教授 (60258077)
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Keywords | 経営者報酬 / 利益情報 / ガバナンス |
Research Abstract |
当該年度において,主に,経営者報酬と企業業績との間の実証的関係についてレビューを行った。取締役報酬の開示状況に関して,わが国において,役員報酬の個別開示に否定的な意見はまだ多い。『東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2007』(2007)のアンケート調査によると,取締役全員の総額開示は東証上場企業全体の75.6%を占める。社内取締役と社外取締役を別々に総額開示する企業は19.2%である。その他でも個別開示に言及している企業はごくわずかである。 ただ,経営者が得る報酬額の開示は重要であるが,コーポレート・ガバナンスの本質は経営者報酬の決定方法である。有効なコントロール・メカニズムを構築する出発点は,経営者にいかに株主の利害に沿った行動をとるようにインセンティブを植え付けるかである。このような観点に立脚すれば,どのような方法で経営者が報酬を得ているかが重要視すべき問題になる。会計利益や株価のような企業業績に連動させる経営者報酬契約は経営者のインセンティブを駆り立てる有効な手段であるが,契約の内容がすべて明示されているわけではないので,経営者報酬が実際に企業業績とどのように連動しているかは実証的課題になる。 国内外の実証的文献に焦点を合わせてみると,経営者報酬決定における企業業績,特に,利益情報の役割が重要であることがわかる。取締役会あるいは報酬委員会は,実現した企業業績から経営者の真実の成果を測定しようとする。それゆえに,経営者のパフォーマンスを正確に映し出す指標が選好される。会計ベースの指標は,株価ベースの指標ほどには市場環境のような経営者の管理不能な要素の影響を受けないので,経営者の努力に関して情報提供的であると考えられる。
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Research Products
(4 results)