2007 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本企業における財務報告実務の自律的展開と財務諸表準則の機能に関する研究
Project/Area Number |
19530409
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
千葉 準一 Tokyo Metropolitan University, 大学院・社会科学研究科, 教授 (90062869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 昌良 首都大学東京, 大学院・社会科学研究科, 准教授 (70237832)
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Keywords | 化学工業 / 財務報告実務 / 財務諸表準則 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「戦前期有機・無機化学工業各社の財務報告実務」に対象を絞り、その財務情報の開示水準と内容を分析し、財務諸表準則の化学工業各社の財務報告実務に対する影響を考察することにある。 この目的のため、本年度は、営業報告書集成第一集から第五集に収録されている母集団から、データの完全性を確保するために予め設定された選定諸規準に基づき、有機・無機化学工業24社のサンプルを抽出し、同企業の財務諸表より、貸借対照表、損益計算書および利益処分案関係の情報を収集し、開示項目について、その項目数ならびに各々の金額に関し、データベースを作成した。 同データベースに基づき、1934年の財務諸表準則公表前(1919-1933)と後(1934-1939)の2期間に分類し、貸借対照表、損益計算書および利益処分案の各表上で開示された平均開示項目数を分析したところ、貸借対照表項目および損益計算書項目については、1932年以降の業績回復期に生じた有機・無機化学工業の規模拡大とともに、幾分増加する傾向を示したが、統計的には有意ではなかった。同様に1934年の財務諸表準則公表前後の2期間で明確な変化が生じているか確認したが、これも統計的には有意ではなかった。以上のことから、開示項目数の変化に着目した場合、戦前期有機・無機化学工業各社の財務報告実務に対しては、財務諸表準則に指導指針としての有意な効力は認められなかった。 以上の分析結果を取りまとめ、日本会計史学会(平成19年9月23日於神戸大学)にて学会報告を行ったほか、これを「日本会計史学会スタディグループ報告書(中間報告)」および''Working Rules for Financial Statements' and pre-WW2 financial reporting of Japanese industrial firms: the case of chemical firms'として取りまとめ、公表した。
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