2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本企業における財務報告実務の自律的展開と財務諸表準則の機能に関する研究
Project/Area Number |
19530409
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
千葉 準一 Hosei University, 経済学部, 教授 (90062869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 昌良 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70237832)
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Keywords | 化学工業 / 財務報告実務 / 企業ガバナンス |
Research Abstract |
本研究の目的は、「戦前期有機・無機化学工業各社の財務報告実務」に対象を絞り、その財務情報の開示水準と内容を分析し、財務諸表準則の化学工業各社の財務報告実務に対する影響を考察することにある。 この目的のため、本年度は、平成19年度および平成20年度に引さ続き、新規に入手した営業報告書集成第七集から第八集に収録されている母集団から、データの完全性を確保するために予め設定された選定諸規準に基づき、有機・無機化学工業24社のサンプルを抽出し、同企業の財務諸表より、貸借対照表、損益計算書および利益処分案関係の情報を収集し、開示項目について、その項目数ならびに各々の金額に関し、データベースを作成した。 同データベースに基づき、貸借対照表、損益計算書および利益処分案の各表上で開示された平均開示項目数を分析したところ、平成19年度および平成20年度の分析結果と同様、これまでの通説として指摘されてきた「戦前期の企業財務報告実務の多様性」に対して、実際に株主総会に提示された財務諸表中に開示された財務情報は各会社間で驚くほど均質的であったことが明らかにされた。これまでの分析結果を裏付けるように、企業規模毎に分類した財務報告実務の実態からみても、やはりグループ間に統計的な有意差はなく、その意味でも開示された財務情報は企業間で均質であったことが明らかにされた。この結論は、化学工業に限定されているとはいえ、開示財務情報を通じた企業ガバナンスの構造が企業間で近似していたことを示唆する重要な証拠として注目される。 以上の分析結果を取りまとめ、「商法計算規定の形成」以下4編の論文を『経済志林』に公表した。また、本研究の関連で付随的に分析した大日本航空株式会社の予算統制の実態を、野口昌良/Trevor BOYNS「日本の航空産業における予算の統制目的利用-政府介入の事例-」として取りまとめ、2009年10月に開催された日本会計史学会第28回全国大会(久留米大学)にて発表し、その後さらに野口昌良/Trevor BOYNS「日本の航空産業における予算の統制目的利用-政府介入の事例-」として『日本会計史学会年報』に投稿し、掲載が許可された。
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