Research Abstract |
本研究課題の研究期間は4年を予定しているが,研究開発投資等と企業価値の間に介在する組織資本と企業価値の関係を,財務データベースやその他のデータを用いた分析によってその一端を明らかにしたいと考える。 具体的には,組織構造,業務プロセス,意思決定権限の分散化,インセンティブシステム,雇用,教育などの企業の組織行動・方針・仕組みの違いがどのように企業価値に影響を与えるか。また,産業,企業,規模等の違いにより,組織資本と企業価値の関係に違いが見られるかを明らかにしたい。さらに,可能であれば,こうした関係に国際的な違いが見られるかについて実証的に明らかにしたい。 本年度は,企業特性の視点から,わが国上場企業をハイテク産業とローテク産業に分類し,両産業における無形資産と企業価値の関連性について実証分析を試みた。分析の結果,両産業には無形資産について異なる特徴が見られた。しかし,会計情報の価値関連性については,ハイテク産業とローテク産業で統計的に有意な差は見られなかった。また,価値関連性の低下は,分析期間中,ハイテク産業,ローテク産業の双方に見られたが,ローテク産業については,価値関連性の低下は統計的に有意ではなかった。すなわち,ハイテク産業については,無形資産の増大を示唆する証拠が一部得られた。本研究の分析結果は,Gu(2004)等の分析結果とほぼ一致するため,分析方法に大きな誤りはないと思われる。ただし,Gu(2004)では,時系列サンプルの説明力を見るため,本研究で用いた決定係数ではなく残差分散を用いて分析を行っている。 なお,分析データについては,先行研究を参考に財務データベースから入手したが,組織資本に関しては,財務データベースからだけでは入手できないデータが存在する。その他,分析上の問題点があるが,こうした点に関しては,今後の研究課題としたい。
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