2008 Fiscal Year Annual Research Report
訂正報告書データベースの構築とその経済的意義の研究
Project/Area Number |
19530420
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥村 雅史 Waseda University, 商学学術院, 教授 (30247241)
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Keywords | 財務会計 / 会計監査 / 訂正報告書 |
Research Abstract |
本年度は、東京証券取引所が提供する適時開示情報データベース(TDnet)を利用して、2004年から2007年において決算短信の公表後にその内容を訂正している企業のサンプルをおよそ3,000件程度収集し、データベースを作成した。そして、その傾向を分析するとともに、訂正情報に対する株式市場の反応について検討した。その結果、西武鉄道事件の発生、証券取引所による決算発表の早期化要求、内部統制監査の導入などの要因を背景として、この期間において決算短信の訂正が急増していること、決算短信公表直後の監査によって訂正事項が発見されることが多いこと、訂正の急増は本則市場と新興市場の区別なく同様なこの傾向であること、業種についても広がりがあり、特定業種にとくに集中しているわけではないこと、訂正箇所も多様であることなどの一般的な傾向を明らかにすることができた。さらに、訂正情報の公表に対する株式市場の反応を分析したところ、株式市場は訂正情報について統計的に有意にマイナスの反応をしていることが判明した。また、利益情報の訂正をしたサンプルについて、訂正規模と株式市場の反応との関係を分析したところ、そのマイナスの反応が強いものであるとともに、訂正規模が大きいほど株式市場の反応が大きいという結果が得られた。以上のような分析から、決算短信の訂正情報は、株式市場において重要な情報であり、投資家はこの情報を意思決定に利用しているということがわかった。これらは、これまでわが国では注目されてこなかった決算情報に関する訂正情報の重要性を明らかにするものであり、次年度に実施する、さらに、詳細な分析の基礎をなすものである。
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