2007 Fiscal Year Annual Research Report
企業業績に対する資本市場の期待の形成過程に関する実証研究
Project/Area Number |
19530421
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
加藤 千雄 Osaka University of Economics, 経営情報学部, 准教授 (90319567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 融 大阪経済大学, 経営情報学部, 教授 (50300364)
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Keywords | 企業業績 / 経営者予想 / 株式保有構造 / 市場の反応 |
Research Abstract |
証券取引所の要請により行われる経営者自身の業績予想の開示(適時開示)は、主要先進国に例を見ない、本邦独自の開示制度である。しかし開示情報を電子媒体で利用可能になったのは最近のことであり、当該分野の研究実績はあまり多くない。 本研究では1990年代後半から最近までのデータの分析から日本の経営者が開示する業績予想は、従来の認識に反し、概して楽観的なものであったことが明らかにしてきた。これを受け、(1)なぜ経営者は楽観的な予想を開示し続けていたのか?(2)また近年注目されつつあるアナリストによる業績予想はどのような特性を持っているのか?(3)さらに経営者とアナリストが公表する予想は、どのような関係にあるのかこれらの問題意識のもと、本研究では経営者予想とアナリスト予想の相互関係、たとえば両者の先行性・遅効性や市場に対する相対的な影響力の比較を通じて、市場における業績予想期待の形成過程に関する考察を目的としている。 本報告の年度では特に(1)の問題に焦点を当て、楽観的あるいは保守的な経営者予想の特性が、企業の支配権の形態と関連性を持つことが示唆された。すなわち、(a)株式の持ち合いや融資を通じて金融機関やその他事業法人と密接な関係を構築している企業はより保守的な予想を、(b)経営者や持ち株会などにより経営者自身が支配権を確保している企業はより楽観的な業績予想を公表していることが明らかになってきた。(a)と(b)の結果の相違が、従来から言われる金融機関等によるモニタリング効果を表すものなのか、あるいは株主持合い関係が経営者に対する業績向上圧力を緩和する効果を反映するものなのか、現時点では必ずしも明らかではない。今年度はこの点とともに残る(2)と(3)の課題に取り組む予定である。
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